コラム

借上社宅を中途解約すると違約金はかかる?解約予告の期間と契約前に確認する条項

公開日:2026年11月1日  / 最終更新:2026年11月2日  / 執筆:株式会社ネクストプレナーズ(社宅制度コンサルティング実績300社超)

要約:転勤の内示が変わった、入居者が退職したなど、借上社宅を期間の途中で解約したい場面で迷いやすいのが、違約金と解約予告です。この記事では、民法・借地借家法・消費者契約法・労働基準法の条文で確認できる範囲をもとに、中途解約の違約金の考え方、契約の種類ごとの予告期間、会社と従業員の負担の整理、契約前に確認したい条項をまとめます。

この記事のポイント

借上社宅の中途解約で違約金がかかるかどうかは、法律が一律に決めているのではなく、貸主との賃貸借契約書の特約で決まります。民法420条3項は、違約金は賠償額の予定と推定すると定めており、契約書に書かれた違約金は、原則としてその定めを前提に考えることになります。

解約の予告期間は、契約の種類で変わります。期間の定めのない建物賃貸借は、民法617条により、解約の申入れの日から3か月で終了します。定期借家は、借地借家法38条7項の要件を満たせば1か月で終了しますが、借主が会社の借上社宅にそのまま使えるかは確認が必要です。

転勤の内示が変わった、入居して数か月で社員が退職した、といった理由で、借上社宅を期間の途中で解約したい場面は、総務担当者にとってそれほど珍しくありません。そのときに問題になるのが、「1年未満で解約すると違約金がかかるのか」「何か月前に誰へ連絡すればよいのか」「その費用は会社が負担するのか、従業員に求めるのか」という3つの疑問です。

この記事では、借上社宅を中途解約するときの違約金と解約予告について、民法・借地借家法・消費者契約法・労働基準法の条文で確認できる範囲を整理し、契約前に確認しておきたい条項をチェックリストにまとめます。個別の契約書の有効性や金額の妥当性は、弁護士などの専門家に確認してください。

借上社宅の中途解約とは何か。違約金が問題になる場面

中途解約の意味

借上社宅の中途解約とは、貸主(家主・管理会社)と会社が結んだ賃貸借契約で定めた期間の途中に、借主である会社が契約を終わらせることです。契約期間の満了にともなう退去とは区別して考えます。

借上社宅では、貸主と会社の契約と、会社と従業員の契約が別々に存在します。この記事で扱うのは前者、つまり貸主と会社の間の契約の解約です。従業員との契約の書き方は、社宅使用契約書の書き方で整理しています。

中途解約が起きる主な場面

転勤にともなう社宅手配の全体像は、転勤者の社宅手配でよくあるトラブルと対策でも整理しています。

違約金とは何か

違約金とは、契約に違反したときや、契約で定めた条件に反して契約を終わらせたときに支払う約束をした金銭のことです。民法420条1項は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額をあらかじめ定めておくことができると定めており、同条3項は、違約金は賠償額の予定と推定すると定めています。

賃貸借の実務でいわれる「短期解約違約金」は、法律が名前を付けて定めた制度ではなく、契約書の特約として書かれるものです。入居から一定期間内に解約した場合に支払う旨が書かれていれば、それが違約金条項にあたります。額や期間は契約ごとに異なるため、一般的な金額を示すことはできません。

借上社宅を1年未満で解約すると違約金はかかるのか

違約金がかかるかどうかは、貸主との契約書に違約金の条項があるかどうかで決まります。民法も借地借家法も、中途解約の違約金そのものを定めてはいません。契約書に条項があれば、その内容が出発点になります。

契約書に条項があれば、その内容が出発点になる

民法420条1項により、当事者は賠償額を予定できます。契約書に「入居から一定期間内に解約したときは、賃料の一定月数分を支払う」といった条項があれば、その条項が適用される前提で、解約の時期と金額を確認します。

金額が過大かどうかは、条項の内容や契約の事情によって争いになり得る論点です。条文だけで一律に判断できないため、高額な違約金を請求された場合は、弁護士に確認してください。

法人契約では、消費者契約法の違約金の規制は対象外と考えられる

消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除にともなう損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項について、同種の契約の解除にともなって事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効としています。ただし、同法2条1項は、「消費者」を個人と定義し、事業として、または事業のために契約の当事者となる場合の個人を除いています。

借上社宅は、会社が借主となる法人契約です。会社は個人ではないため、消費者契約法の「消費者」にあたらず、同法9条の対象にならないと考えられます。従業員個人が自分の名義で、自分の住まいとして契約している賃貸住宅とは、法的な位置づけが異なる点に注意してください。法人契約と個人契約の違いは、借上社宅はなぜ法人契約が前提なのかで整理しています。

契約の種類で、中途解約のルールはこう変わる

借上社宅の賃貸借契約は、期間の定めの有無や、更新の有無によって、中途解約の扱いが変わります。契約書の表題や重要事項説明書で、どの形かを最初に確認してください。

契約の形借主からの中途解約根拠となる条文
期間の定めがある普通借家契約書に、期間内に解約する権利(中途解約条項)があるときに、その条項に従って解約できる。予告期間を契約書が定めていなければ、民法617条が準用され、建物は申入れの日から3か月で終了する民法618条、617条
期間を1年未満とした普通借家期間の定めがない賃貸借とみなされるため、借主はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から3か月で終了する借地借家法29条1項、民法617条
期間の定めがない賃貸借いつでも解約の申入れができ、建物の賃貸借は申入れの日から3か月で終了する民法617条1項
定期借家(更新がない契約)契約書の中途解約条項に従う。居住用で床面積200平方メートル未満の建物は、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情で借主が生活の本拠として使用することが困難になれば、申入れの日から1か月で終了する借地借家法38条7項

契約書が予告期間を別に定めている場合は、契約書の記載を確認してください。表は、条文が定める基本的な考え方を示したものです。

期間の定めがある普通借家は、解約条項の有無が分かれ目になる

民法618条は、当事者が賃貸借の期間を定めた場合でも、その一方または双方が期間内に解約をする権利を留保したときは、617条を準用すると定めています。反対に言えば、契約書に中途解約の条項がなければ、期間の途中で借主が一方的に契約を終わらせられると、条文からは言えません。

実務では、貸主の承諾を得て合意で解約する形になることもあります。そのため、契約前に、中途解約が可能か、予告期間は何か月前か、違約金はどうなるかを書面で確認しておくことが、いちばん確実な備えになります。

定期借家は、更新がない代わりに中途解約の条件が決まっている

定期借家とは、期間満了で契約が終わり、更新がないことをあらかじめ書面で定めた建物賃貸借のことです(借地借家法38条1項)。契約期間の途中で解約できるかどうかは、契約書の定めによります。

借地借家法38条7項は、居住の用に供する建物で、床面積が200平方メートル未満のものについて、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、解約の申入れができ、申入れの日から1か月で終了すると定めています。同条8項は、この規定に反する特約で借主に不利なものを無効としています。

ここで注意したいのは、条文が「借主が建物を自己の生活の本拠として使用する」場合を想定している点です。借上社宅では、借主は会社で、実際に住むのは従業員です。会社名義の借上社宅でこの規定をそのまま使えるとは言い切れないため、定期借家で契約する場合は、契約書に、転勤や退職などで入居者がいなくなったときの中途解約条項を入れてもらえるかを、契約前に確認することをおすすめします。

貸主から解約を申し入れられたとき

反対に、貸主の側から解約を申し入れられる場合もあります。借地借家法27条1項は、建物の賃貸人が解約の申入れをしたときは、申入れの日から6か月を経過することによって賃貸借が終了すると定めています。さらに、同法28条は、賃貸人による解約の申入れに正当の事由が必要であると定めています。貸主から一方的に短い期間での退去を求められても、直ちに従う必要があるとは限りません。

解約予告はいつまでに、誰に、どう伝えるか

解約予告は、契約書に書かれた予告期間から逆算して、書面で貸主または管理会社に伝えます。予告期間は契約書の記載が最優先なので、まず契約書を確認し、解約したい日の何日前までに通知が必要かを確かめます。

解約の手順(5つのステップ)

  1. ステップ1:貸主との賃貸借契約書で、中途解約の条項、予告期間、違約金の条項を確認する。特約欄や重要事項説明書にも書かれていることがある
  2. ステップ2:解約したい日から予告期間を逆算し、通知の期限を決める。予告期間中の賃料が発生するかどうかも確認する
  3. ステップ3:契約書が定める方法(書面、通知先、到達日の扱い)で、貸主または管理会社へ解約を通知する
  4. ステップ4:入居中の従業員がいる場合は、社宅規程と社宅使用契約書に沿って、退去の日と手続きを伝える
  5. ステップ5:退去の立会い、原状回復、敷金の精算を行い、違約金や予告期間分の賃料を含めた費用の負担先を整理する

従業員の退去期限の決め方は、退職したら社宅はいつまでに出る?で、退去時の費用は、社宅の退去費用は誰が負担する?で整理しています。

予告期間が長いと、解約後も賃料が発生しやすい

たとえば、予告期間が3か月の契約で、社員の退職が決まってから通知をすると、通知の日から3か月間は賃貸借が続く扱いになるのが基本です。この間、入居者がいなくても賃料を負担することになります。転勤や退職の見込みが出た時点で、早めに予告できる準備をしておくと、無駄な賃料を減らせます。

違約金や予告期間分の賃料は、会社と従業員のどちらが負担するか

貸主に支払う違約金や、予告期間中の賃料は、まず借主である会社が貸主に支払います。そのうえで、従業員にその一部を求めるかどうかは、会社が社宅規程と社宅使用契約書で決める事項です。

負担の整理は、解約の理由別に考える

どの場合にどちらが負担するかは、法令では決まっていません。規程に書いていないことを、解約が決まった後に従業員へ求めるのは、トラブルのもとになります。

従業員に違約金を課す定めは、労働基準法16条との関係に注意する

労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定めています。社宅の使用関係は労働契約とは別の契約ですが、「社宅を途中で退去したら一律〇万円を支払う」といった定めは、この規定との関係が問題になり得ます。

従業員に求める場合は、一律の違約金ではなく、貸主に実際に支払った金額の範囲で請求する形にとどめ、規程への書き方は社会保険労務士や弁護士に確認してください。給与から差し引く場合は、労働基準法24条1項のただし書にもとづく労使協定も必要になります。詳しくは、社宅の家賃は給与から天引きしてよい?を参照してください。

契約前に確認したい中途解約の条項チェックリスト

中途解約の費用は、契約後に交渉するよりも、契約前に条項を確認しておくほうが、はるかに調整しやすくなります。次の項目を、貸主との契約書と照らし合わせてください。

ネクストプレナーズの見解

借上社宅の導入時に、賃料や間取りは比較しても、中途解約の予告期間と違約金の条項は十分に確認されないまま契約している場面が多いと感じます。中途解約の費用は、転勤や退職が決まってからでは交渉の余地が小さくなるため、契約前の確認が重要だと考えます。

中小企業では、転勤者の入れ替わりが少なくても、入居予定者の事情の変更は起こり得ます。契約前に、中途解約の可否、予告期間、違約金の有無の3点を貸主へ確認し、あわせて、会社都合と従業員都合のどちらの場合に誰が負担するかを社宅規程に書いておくことをおすすめします。

まとめ

借上社宅の中途解約の違約金は、法律が一律に定めるものではなく、貸主との契約書の特約で決まります。解約の予告期間は、契約書の記載が優先され、定めがない場合や期間の定めがない場合は、民法617条により建物は3か月が基本になります。

契約前に、解約条項、予告期間、違約金、予告期間中の賃料を確認し、従業員への負担の求め方は、社宅規程と社宅使用契約書に書いておきます。従業員へ一律の違約金を課す定めは、労働基準法16条との関係に注意してください。

ご利用にあたっての注意

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約書の内容や違約金条項の有効性に対する法的な助言ではありません。法令は改正される場合があります。実際の契約にあたっては、最新の法令を確認し、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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出典

  • 民法(明治二十九年法律第八十九号)第420条・第617条・第618条|e-Gov法令検索
  • 借地借家法(平成三年法律第九十号)第27条・第28条・第29条・第38条|e-Gov法令検索
  • 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第2条・第9条|e-Gov法令検索
  • 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第16条・第24条|e-Gov法令検索

よくあるご質問

契約書に違約金の条項があれば、かかる可能性があります。法律が中途解約の違約金を一律に定めているわけではなく、貸主との賃貸借契約書の特約で決まります。民法420条3項は、違約金は賠償額の予定と推定すると定めています。入居から何か月以内に解約するといくら支払うのかを、契約前に契約書で確認してください。
まず契約書に書かれた予告期間に従います。契約書に定めがなく、期間の定めのない建物賃貸借の場合は、民法617条1項2号により、解約の申入れの日から3か月で終了します。期間を1年未満とした建物の賃貸借は、借地借家法29条1項により期間の定めがないものとみなされます。
契約書に中途解約の条項があれば、その条件に従って解約できます。借地借家法38条7項は、居住用で床面積200平方メートル未満の建物について、転勤などのやむを得ない事情で借主が生活の本拠として使用することが困難になったときの解約を認めていますが、借主が会社の借上社宅にそのまま使えるかは確認が必要です。契約前に、入居者が不在になったときの中途解約条項を貸主と確認してください。
法令で負担者が決まっているわけではなく、会社が社宅規程などで定める事項です。貸主に支払うのは借主である会社ですが、会社都合の転勤や異動による解約は、会社が負担する整理が考えられます。従業員に一部を求める場合は、規程や社宅使用契約書に事前に書いておく必要があります。
直ちに退去が必要とは限りません。借地借家法27条1項は、建物の賃貸人が解約の申入れをしたときは、申入れの日から6か月を経過して賃貸借が終了すると定めています。同法28条は、賃貸人による解約の申入れに正当の事由が必要としています。個別の事案は、弁護士に確認してください。
一律の違約金を課す定めは、労働基準法16条との関係が問題になり得るため、慎重な検討が必要です。同条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めることを禁じています。従業員に求める場合は、貸主に実際に支払った金額の範囲にとどめ、規程への書き方を社会保険労務士や弁護士に確認してください。

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