コラム

借上社宅の初期費用は誰が負担する?敷金・礼金・仲介手数料・更新料の会社負担と税務・経理の考え方

公開日:2026年10月11日  / 執筆:株式会社ネクストプレナーズ(社宅制度コンサルティング実績300社超)

要約:借上社宅の初期費用は、敷金・礼金・仲介手数料などが契約時にまとまって発生し、会社が払ってよいのか、課税されないのかで迷いやすい部分です。この記事では、国税庁の資料で確認できる範囲を整理し、費用ごとの法人税上の扱いと、社宅規程に負担区分を書く手順を、総務担当者向けに解説します。

借上社宅を契約するときは、毎月の家賃だけでなく、敷金・礼金・仲介手数料といった初期費用が一度にまとまって発生します。「この費用は会社が払ってよいのか」「従業員に課税されないのか」「経理ではどう処理するのか」と、契約の直前になって迷う総務担当者は少なくありません。

この記事では、借上社宅の初期費用を誰が負担するかという問いについて、国税庁の資料で確認できる範囲を整理し、確認できない部分は税理士に確認すべき論点として切り分けます。費用ごとの扱いと、社宅規程に負担区分を書くときの手順まで説明します。

この記事のポイント

借上社宅は会社が契約者になるため、初期費用を支払う主体も原則として会社です。ただし、国税庁のタックスアンサーNo.2597は家賃(賃貸料相当額)を基準に社宅の課税を説明しており、敷金・礼金などの初期費用についての記載はありません。

法人税の面では、礼金のような権利金等は繰延資産になる場合があり、仲介手数料は支払った事業年度の損金に算入できるとされています。個別の判断は契約書の内容によって変わるため、税理士と確認しながら進めてください。

借上社宅の初期費用とは何か。会社が契約者になる意味

借上社宅の初期費用の主な項目

借上社宅の初期費用とは、会社が賃貸借契約を結んで社宅として従業員に貸与するときに、契約の締結時などに家主や仲介会社へ支払う、毎月の家賃以外の費用のことです。

どの費用が発生するかは物件や契約によって異なりますが、一般的には次のような項目があります。

項目の名称や金額、返還の有無は契約書で決まります。まず、検討している物件の契約条件を見積書や重要事項説明書で確認し、どの項目が自社の負担になるのかを洗い出すことが出発点です。

原則として費用を払うのは契約者である会社

借上社宅では、会社が借主として家主と契約します。そのため、契約に伴う初期費用を家主や仲介会社に支払うのも会社です。

一方、従業員が自分の名義で契約した住宅の家賃を会社が負担する場合は、扱いが大きく変わります。国税庁のタックスアンサーNo.2597では、現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅の貸与とは認められず給与として課税されるとされています。同ページが具体的に説明しているのは家賃ですが、初期費用を会社が従業員の名義契約に対して負担する場合も、社宅の貸与の枠組みの外にある支出として、給与とみなされる可能性があります。この点は事前に税理士へ確認してください。

初期費用を会社が負担すると従業員に課税されるのか

国税庁のタックスアンサーNo.2597は、社宅の課税を家賃を基準に説明しており、敷金・礼金・仲介手数料・更新料といった初期費用についての記載はありません。そのため、初期費用の課税関係は、このページだけでは判断できません。

No.2597で確認できる家賃の基準

No.2597によると、使用人から1か月当たり賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を受け取っていれば、給与として課税されません。賃貸料相当額は、建物の固定資産税の課税標準額、建物の総床面積、敷地の固定資産税の課税標準額を使って計算します。この計算式に、敷金や礼金は登場しません。

また、同ページは、会社などが他から借りて貸与する場合も、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認して賃貸料相当額を計算するとしています。借上社宅の家賃の考え方は、住宅に関連した福利厚生制度の種類と概要の記事でも整理しています。

会社が契約者の場合に考えること

会社が借主となる契約で、会社が家主や仲介会社に初期費用を支払う場合、その費用は従業員が受け取る金銭ではなく、会社が負担する契約上の費用です。ただし、初期費用を会社が負担することで従業員に生じる経済的利益の扱いについて、国税庁が個別に説明している資料は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。

そのため、初期費用の一部でも従業員に負担させるのか、全額を会社が負担するのかは、課税面の確認と、自社の制度の目的の両方から決める必要があります。確認の結果と判断の根拠は、社内に残しておくことをおすすめします。

初期費用の費用別の整理。法人税と消費税で確認できること

ここからは、会社が支払う側として、費用ごとに国税庁の資料で確認できる内容を整理します。表に書いたのは、国税庁の資料に明記されている内容だけです。表にない論点は、契約書をもとに税理士へ確認してください。

費用 国税庁の資料で確認できること 規程で決めておくこと
敷金 契約の終了により返還される敷金は、消費税の資産の譲渡等の対価に当たらない(No.6225) 退去時の精算、原状回復費用の負担
礼金 権利金などで効果が1年以上に及ぶものは繰延資産になる(No.5460)。支出額が20万円未満なら損金経理で当期の損金にできる(令134条) 会社負担か本人負担か
仲介手数料 支払った日の属する事業年度の損金に算入できる(No.5460、法人税基本通達8-1-5の注) 会社負担か本人負担か
更新料 No.5460に更新料の個別の記載はない。住宅の賃貸借契約に伴う更新料のうち返還しないものは、消費税が非課税(No.6225) 更新時の負担、更新前に転勤した場合の扱い

敷金は返還を前提に預けるお金

敷金は、契約の終了時に精算して返還されることを前提とするお金です。国税庁のタックスアンサーNo.6225では、契約の終了により返還される保証金や敷金は資産の譲渡等の対価に該当せず、消費税の課税の対象にならないとされています。

実務では、返還されない部分が契約で決まっている場合や、退去時に原状回復費用が差し引かれる場合があります。差し引かれる費用を誰が負担するのかは、トラブルになりやすい点です。社宅規程に、会社と本人の負担区分を書いておきましょう。

礼金は権利金等として繰延資産になる場合がある

法人が建物を賃借するために支払った権利金、立退料などの費用で、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは繰延資産になると、国税庁のタックスアンサーNo.5460は説明しています。償却期間は、建物の新築時に支払った権利金等や、借家権として転売できる権利金等を除くと、原則5年です。ただし、契約による賃借期間が5年未満で、契約の更新時に再び権利金等の支払が必要なことが明らかな場合は、その賃借期間になります。

礼金という名称は同ページには出てきません。礼金が権利金等に当たるかどうかは、返還の有無や契約の内容を見て判断することになるため、契約書を税理士に見てもらうことをおすすめします。

支出額が小さい場合は、法人税法施行令第134条により、繰延資産となる費用のうち支出する金額が20万円未満のものは、支出した事業年度に損金経理をすれば、その金額を損金の額に算入できます。この20万円未満かどうかは、法人税基本通達8-3-8により、賃借のための権利金等については契約ごとに支出する金額で判定するとされています。

仲介手数料は支払った事業年度の損金に算入できる

No.5460には、建物の賃借に際して不動産業者などに支払った仲介手数料は、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができると書かれています。法人税基本通達8-1-5の注にも、同じ内容が定められています。

礼金と仲介手数料は、同じ初期費用でも税務上の扱いが異なります。経理処理を一括りにせず、費用ごとに分けて仕訳を考えるのが基本です。

更新料は契約書と税理士への確認が必要

更新料については、No.5460に個別の記載がありません。ただし、同ページの償却期間の説明には、契約による賃借期間が5年未満で、更新に際して再び権利金等の支払が必要なことが明らかな場合の定めがあります。更新料の扱いは、契約内容や支払の性質で変わる可能性があるため、更新が近づいたら事前に税理士へ確認してください。

消費税の面では、No.6225で、住宅に係る賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金または更新料などのうち、返還しないものは非課税とされています。社宅は住宅の貸付けに当たるため、この記載が当てはまると考えられますが、会社側の消費税の処理は個別の事情で変わるため、経理担当者や税理士に確認してください。

会社と従業員の初期費用の負担区分を決める手順

初期費用の負担区分は、税務だけでなく、制度の目的や従業員の納得感を踏まえて決める必要があります。次の手順で整理すると、規程に落とし込みやすくなります。

ステップ1:初期費用の項目を洗い出す

過去の契約書や見積書をもとに、自社が実際に負担している初期費用の項目と金額を一覧にします。敷金・礼金・仲介手数料のほか、保証会社の利用料、火災保険料、鍵交換費用など、物件によって発生する費用も含めて洗い出します。

ステップ2:項目ごとに会社負担か本人負担かを決める

洗い出した項目ごとに、会社が負担するもの、従業員が負担するもの、上限額を設けて超過分は本人負担とするものを決めます。同じ社宅制度の中で、部署や担当者によって負担が違うと、不公平感につながります。

ステップ3:返還される費用と退去時の精算を決める

敷金のように返還されるお金は、返還を受ける主体が会社であることを明確にします。原状回復費用や、故意・過失による損害の負担についても、本人負担の範囲を具体的に書いておくと、退去時のトラブルを減らせます。

ステップ4:社宅規程に明記し、従業員へ周知する

決めた負担区分は、社宅規程に条文として書きます。規程の作り方や就業規則との関係は、社宅規程の作り方。就業規則改定・労基署届出までの実務手順で整理しています。光熱費や駐車場代といった毎月の費用の考え方は、社宅の水道光熱費・駐車場代・管理費を会社が負担すると課税される?もあわせて確認してください。

ステップ5:税務・経理の扱いを税理士と確認する

規程を確定する前に、初期費用の課税関係と経理処理を税理士に確認します。確認した内容は、仕訳の方法とあわせて社内のマニュアルに残しておくと、担当者が交代しても同じ判断を続けられます。

転勤が多い会社で初期費用が膨らみやすい理由

転勤や異動が多い会社では、契約のたびに礼金や仲介手数料が発生し、短い期間で退去する場合も同じ費用がかかります。契約期間の途中で退去することになった場合に、費用を誰が負担するのかも、事前に決めておきたい項目です。

転勤者の社宅手配では、契約名義や費用負担の食い違いからトラブルになることもあります。具体的な事例と対策は、転勤者の社宅手配でよくあるトラブルと対策で解説しています。

ネクストプレナーズの見解

初期費用は、家賃に比べて金額が大きく見えるため、総務担当者が最初に悩む部分だと考えます。ただ、国税庁のタックスアンサーNo.2597は家賃を基準に社宅の課税を説明しており、初期費用への言及がない点は、実務で見落とされやすい誤解のもとだと考えます。

中小企業の実務では、まず会社が契約者になっていることを前提に、費用ごとに「会社が負担するもの」と「本人が負担するもの」を一覧にし、社宅規程に書いておくことをおすすめします。そのうえで、礼金・更新料のように判断が分かれやすい費用は、契約書を添えて税理士に確認し、確認結果を社内に残しておくと運用が安定すると考えます。

初期費用の負担を決めるときのチェックリスト

まとめ

借上社宅の初期費用は、会社が契約者として支払うのが基本です。国税庁のタックスアンサーNo.2597は家賃を基準に課税を説明しているだけで、敷金・礼金などの初期費用には触れていないため、課税面の判断は税理士に確認しながら進める必要があります。

法人税の面では、礼金のような権利金等は繰延資産になる場合があり、仲介手数料は支払った事業年度の損金に算入できるとされています。費用ごとに扱いが異なるため、項目別に整理し、負担区分を社宅規程に明記しておくことが、運用の安定につながります。

ご利用にあたっての注意

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する税務上・会計上の助言ではありません。税務の取扱いは改正される場合があります。実際の経理処理や規程の作成にあたっては、最新の法令・通達を確認し、税理士などの専門家にご相談ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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出典

よくあるご質問

国税庁のタックスアンサーNo.2597には、礼金や仲介手数料の負担に関する記載がなく、このページだけでは判断できません。会社が契約者として家主や仲介会社に支払う場合と、従業員名義の契約に会社が負担する場合とで扱いが異なる可能性があるため、契約書を税理士に見てもらって確認してください。
返還される敷金は、返還を前提に預けるお金であり、家賃や礼金のような費用とは性質が異なります。国税庁のタックスアンサーNo.6225でも、契約の終了により返還される敷金は消費税の課税の対象にならないとされています。返還されない部分が契約で決まっている場合の扱いは、契約書を確認して税理士に相談してください。
はい、できます。国税庁のタックスアンサーNo.5460と法人税基本通達8-1-5の注では、建物の賃借に際して不動産業者などに支払った仲介手数料は、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができるとされています。
礼金が権利金等に当たり、効果が1年以上に及ぶ場合は繰延資産となり、原則5年などの償却期間で費用化します。ただし、支出額が20万円未満であれば、法人税法施行令第134条により、支出した事業年度に損金経理をすることで損金の額に算入できます。礼金が権利金等に当たるかどうかは、契約内容を踏まえて税理士に確認してください。
払うこと自体は可能ですが、社宅の貸与とは認められず、給与として課税される可能性があります。国税庁のタックスアンサーNo.2597では、入居者が直接契約している場合の家賃負担は給与として課税されるとされており、初期費用も同様に扱われる可能性があるため、事前に税理士へ確認してください。
契約者である会社が家主に支払うのが基本で、従業員に負担させるかどうかは社宅規程で決めます。国税庁のタックスアンサーNo.5460には更新料の個別の記載がないため、税務上の扱いは税理士に確認し、更新時や契約期間の途中で退去する場合の負担も、あらかじめ条文に書いておくと運用が安定します。

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