社宅の水道光熱費・駐車場代・管理費を会社が負担すると課税される?賃貸料相当額に含まれる費用と含まれない費用の線引き
要約:社宅の水道光熱費や駐車場代を会社が負担すると給与として課税されるのか、管理費はどう扱うのかは、社宅制度の運用で判断に迷いやすいポイントです。この記事では、国税庁の通達・質疑応答にもとづき、賃貸料相当額の算式に入る費用と入らない費用を整理し、費用ごとの課税の考え方と実務の進め方を解説します。
社宅を借り上げて従業員に貸与している会社では、「水道光熱費や駐車場代も会社で負担してよいのか」「管理費や共益費は課税の計算に入れるのか」という質問が、人事・総務の現場で繰り返し出てきます。賃貸料相当額の計算式は広く知られていますが、家賃以外の費用がどこまで計算式に含まれるのかは、意外と整理されていません。
この記事では、社宅の水道光熱費・駐車場代・管理費を会社が負担したときの課税の考え方を、国税庁のタックスアンサー、所得税基本通達、質疑応答事例にもとづいて整理します。賃貸料相当額に含まれる費用と含まれない費用の線引き、費用ごとの実務の進め方まで順に見ていきます。
賃貸料相当額の算式は、建物と敷地の固定資産税の課税標準額、建物の総床面積から求めます。国税庁のNo.2597には、水道光熱費・駐車場代・管理費は算式の項目として出てきません。
従業員本人が負担すべき水道光熱費や駐車場代を会社が負担すると、通達36-15の考え方により、給与として課税される経済的利益にあたると考えられます。一方、家主に支払う家賃に含まれて請求される管理費については、個人的な費用を会社が負担したものとして扱う必要はないとする質疑応答事例があります。
社宅の費用で課税されるものとされないものの線引き
社宅の水道光熱費や駐車場代を会社が負担した場合、従業員本人が負担すべき費用を会社が肩代わりしたことになるため、給与として課税される経済的利益にあたると考えられます。管理費・共益費は、家主に支払う家賃に含まれて請求されているときは、別途の課税対象として扱う必要はないとされています。
ただし、この結論は費用の種類と契約の形によって変わります。まず「賃貸料相当額とは何か」を確認し、そのうえで費用別に整理します。
賃貸料相当額とは何か。計算式に入っている費用
賃貸料相当額とは、使用人に社宅を貸与したときに、給与課税の有無を判定する基準となる月額のことです。国税庁の算式で求めます。
賃貸料相当額の算式
国税庁の「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」によると、賃貸料相当額は次の(1)から(3)の合計額です。
賃貸料相当額(1か月)= (1)その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2パーセント + (2)12円 × (その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3平方メートル) + (3)その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22パーセント
同ページでは、会社が所有する社宅だけでなく、他から借りて貸与する場合でも、この(1)から(3)を合計した金額が賃貸料相当額になると説明されています。借上社宅では、貸主や管理会社に固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。
従業員から徴収する家賃と50パーセントの基準
使用人から1か月当たり受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、給与として課税されません。所得税基本通達36-47も、使用者が使用人から実際に徴収している賃貸料の額が通常の賃貸料の額の50%相当額以上である場合には、住宅等の貸与による経済的利益はないものとすると定めています。
無償で貸与する場合は賃貸料相当額の全額が、賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合は、その差額が給与として課税されます。たとえば賃貸料相当額が10,000円の社宅で、従業員から3,000円を受け取っていれば、差額の7,000円が給与として課税されます。6,000円を受け取っていれば、50パーセント以上のため、差額の4,000円は課税されません。
算式に入っているものと入っていないもの
この算式に出てくるのは、建物と敷地の固定資産税の課税標準額、そして建物の総床面積だけです。次の費用は、No.2597の算式にも説明にも項目として出てきません。
- 水道光熱費(電気・ガス・水道):算式に項目がない
- 駐車場代:算式に項目がない(算式は家屋とその敷地について定めている)
- 家具・家電の貸与:算式に項目がない
つまり、賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を徴収していても、それだけでこれらの費用の課税関係が解決するわけではありません。これらの費用は、別の論点として考える必要があります。
固定資産税の課税標準額の確認と見直し
国税庁の質疑応答事例によると、算式の基礎となる固定資産税の課税標準額は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格によります。土地と家屋は原則として3年ごとに評価が見直されます。使用人に貸与した社宅については、課税標準額の改訂幅が20%以内であれば、再計算をする必要はないとされています(所得税基本通達36-46)。
社宅の水道光熱費を会社が負担すると課税されるのか
社宅の水道光熱費(電気・ガス・水道の使用料)を会社が負担すると、従業員本人が負担すべき費用を会社が負担したことになり、給与として課税される経済的利益にあたると考えられます。賃貸料相当額の算式には光熱費が含まれていないため、家賃の徴収額とは別に判断します。
通達36-15が定める経済的利益の考え方
所得税基本通達36-15は、給与などに含まれる「経済的利益」の例を挙げています。その中には、土地や家屋などの資産の貸与を無償または低い対価で受けた場合の利益、用役の提供を無償または低い対価で受けた場合の利益のほか、自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益が含まれます。
従業員が自分で契約している電気・ガス・水道の料金は、従業員本人の債務です。これを会社が支払えば、「自己の債務を他人が負担した場合」の考え方にあたり、会社が負担した金額が給与として扱われると考えられます。会社が一律で毎月一定額の光熱費補助を支給する場合も、同じ考え方で給与として扱うのが基本です。
課税関係が生じにくい運用
光熱費を会社が立て替えて支払う運用でも、実際の使用料に相当する金額を従業員から全額徴収していれば、会社が負担した部分は生じません。この場合は、会社が経済的利益を与えたことにならないため、給与課税の問題は起こりにくくなります。
もっとも、毎月の使用料を従業員ごとに把握して精算する手間がかかります。実務では、光熱費は従業員本人が契約して支払う形にしておくほうが、管理の負担は小さくなります。
共用部分の電気料との違い
光熱費のうち、マンションの共用部分の電気料は、家主への家賃や管理費の一部として請求されることがあります。この扱いは、後述する管理費の項目で説明します。従業員の専有部分で使った電気・ガス・水道の料金とは分けて考える必要があります。
駐車場代を会社が負担すると課税されるのか
住宅とは別の契約で借りている駐車場の使用料を会社が負担し、従業員が使用する場合は、給与として課税される経済的利益にあたると考えられます。賃貸料相当額の算式は、家屋とその敷地について定めたもので、別契約の月極駐車場代は含まれていません。
通達36-15(2)の考え方
所得税基本通達36-15(2)は、土地、家屋その他の資産の貸与を無償または低い対価で受けた場合における、通常支払うべき対価の額またはその差額に相当する利益を、経済的利益に含めています。従業員が使う駐車場の使用料を会社が負担すれば、駐車場の貸与を無償で受けたものとして、通常支払うべき対価の額が経済的利益になるという整理です。
判断に迷いやすいケース
駐車場が住宅と一体で貸されている戸建てなどの場合は、賃貸借契約の内容や、敷地の固定資産税の課税標準額がどう扱われているかが関係します。国税庁のNo.2597には、駐車場に関する個別の記載はありません。判断に迷うときは、契約書の内容を確認したうえで、税務署や税理士に相談してください。
また、従業員が通勤のために使う駐車場については、通勤手当の取扱いが別に関わる可能性があります。この記事では社宅に付随する駐車場を前提にしており、通勤手当の扱いまでは扱いません。
管理費・共益費は賃貸料相当額に含めてよいのか
家主に支払う家賃に含まれて請求される管理費等については、「強いて個人的費用を使用者が負担したものとして取り扱う必要はない」とする国税庁の質疑応答事例があります。その総額を含めて「通常の賃貸料の額」を計算して差し支えないと回答されています。
国税庁の質疑応答事例の内容
国税庁の質疑応答事例「役員に貸与したマンションの管理費」では、会社がマンションを借り上げて役員に社宅として貸与し、家主に支払う家賃に次の管理費等が含まれている場合の取扱いが示されています。
- エレベーター保守料
- 火災報知機保守料
- 共用部分電気料、火災保険料
回答は、管理費等を含めて通常の賃貸料の額を計算して差し支えない、というものです。管理費等が家主に支払う賃借料の額に含まれて支払われているときであっても、強いて個人的費用を使用者が負担したものとして取り扱う必要はなく、その総額によって通達36-40本文に定める通常の賃貸料の額を計算して差し支えないとされています。
使用人の社宅に当てはめるときの注意
この質疑応答事例は、役員に貸与した社宅(通達36-40)を前提としたものです。使用人に貸与した住宅等は、通達36-45により、通常の賃貸料の額を計算する際の算式が別に定められています。使用人の社宅でも同じ考え方で整理するのが一般的ですが、個別の契約内容によっては判断が異なる場合があります。実際の適用は、税務署や税理士に確認してください。
また、この事例が扱っているのは、家主に支払う家賃に含まれて請求される管理費等です。従業員の専有部分で使う光熱費や、別契約の駐車場代まで含めてよいという意味ではない点に注意してください。
共用部分も含めて計算する
国税庁の質疑応答事例「役員に貸与したマンションの共用部分の取扱い」では、固定資産税の課税標準額や小規模住宅等かどうかの判定は、共用部分を含めて行うと回答されています。通常の賃貸料の額の算定は、社宅としての資産の利用の対価に相当する額を算出するものだから、というのが理由です。この事例も役員社宅を前提とした回答ですが、共用部分を含めて考えるという趣旨は、計算の基礎となる数値を確認するときの参考になります。
費用別の課税の考え方
ここまでの内容を、費用ごとに整理します。いずれも一般的な考え方であり、個別の判断は税務署や税理士に確認してください。
- 家賃(家主への支払い):賃貸料相当額の50パーセント以上を従業員から徴収していれば、差額は給与として課税されない
- 家賃に含まれる管理費・共益費:家主に支払う家賃に含まれて請求されているときは、個人的費用の負担として別途扱う必要はないとする質疑応答事例がある
- 専有部分の水道光熱費:会社が負担すれば、本人の債務を会社が負担したものとして、給与として扱われると考えられる
- 別契約の駐車場代:会社が負担して従業員が使えば、資産の貸与を受けた利益として、給与として扱われると考えられる
- 家具・家電の貸与:社宅の賃貸料相当額の計算とは原則として区分して評価する
家具・家電の貸与については、国税庁の質疑応答事例「社員に家具等を貸与した場合の経済的利益」で、自社所有の家具等は減価償却費相当額に維持管理費用相当額を加算するなどして合理的に見積もった額、リースの家具等はリース料相当額を経済的利益とすると示されています。家具・家電を会社が用意する制度では、賃貸料相当額の計算とは別に、評価と課税の確認が必要です。
給与課税になる費用がある場合の実務手順
光熱費や駐車場代などを会社が負担する制度にする場合は、次の手順で整理すると、運用の抜け漏れを防げます。
ステップ1:会社が負担している費用を洗い出す
家賃のほかに、会社が支払っている費用を一覧にします。管理費・共益費、水道光熱費、駐車場代、更新料、火災保険料、家具・家電のリース料などが対象です。現状で会社が負担している費用を、契約書や請求書から確認します。
ステップ2:費用ごとに課税の有無を整理する
洗い出した費用を、前の章の考え方で分類します。「家賃に含まれて家主に支払う費用」「従業員の個人的な消費にあたる費用」「別契約の費用」に分けると整理しやすくなります。分類が難しい費用は、税理士に確認する項目としてリスト化します。
ステップ3:負担区分を社宅規程に明記する
会社負担とする費用と、従業員負担とする費用を、社宅規程に明記します。規程の作り方は、社宅規程の作り方|就業規則の改定から労基署への届出までの実務手順で解説しています。
ステップ4:給与課税する費用は給与計算に反映する
給与として課税される費用は、源泉徴収の対象になります。国税庁のNo.2597の対象税目は源泉所得税です。社会保険料や労働保険料での扱いは、税務とは別に確認が必要です。社宅の現物給与価額に関する最近の改正は、令和8年10月から社宅の現物給与価額が変わりましたで整理しています。
ステップ5:契約と精算の運用を決める
光熱費を従業員本人の契約にするのか、会社が立て替えて実費精算するのかを決めます。転勤者の社宅手配では、契約名義や費用負担の食い違いからトラブルになることもあります。転勤者の社宅手配でよくあるトラブルと対策もあわせて確認してください。
ネクストプレナーズの見解
家賃の徴収額が賃貸料相当額の50パーセントを満たしていれば、社宅にかかる費用全体の課税関係が整理できたと誤解されることがありますが、光熱費や駐車場代は別の論点として確認が必要だと考えます。
中小企業の社宅制度では、まず「会社が負担する費用は家賃と、家主に支払う家賃に含まれる管理費に絞る」という設計にし、光熱費や駐車場代は従業員本人の負担とするのが、運用も説明もしやすい方法だと考えます。会社が負担する費用を増やす場合は、課税の扱いを事前に税理士と確認し、規程に明記しておくことをおすすめします。
社宅の費用負担を見直すときのチェックリスト
- 家賃以外に会社が負担している費用を、すべて洗い出している
- 水道光熱費は、従業員本人が契約して支払う運用になっているか、会社負担の場合は給与として扱う運用になっている
- 駐車場代を会社が負担している場合は、課税の扱いを確認している
- 家主に支払う家賃に含まれる管理費・共益費の内訳を、契約書や請求書で確認している
- 従業員から徴収する家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上になっている
- 固定資産税の課税標準額が改訂されたときの再計算の要否を、確認する仕組みがある
- 費用の負担区分を、社宅規程に明記している
- 判断に迷う費用は、税理士や税務署に確認している
まとめ
賃貸料相当額の算式は、建物と敷地の固定資産税の課税標準額、建物の総床面積から求めるもので、水道光熱費・駐車場代・管理費は算式の項目に含まれていません。従業員から賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を受け取っていれば、差額は給与課税されませんが、それだけで光熱費や駐車場代の課税関係が解決するわけではありません。
従業員本人の光熱費や別契約の駐車場代を会社が負担すれば、給与として扱われると考えられます。家主に支払う家賃に含まれる管理費は、個人的費用の負担として別途扱う必要はないとする質疑応答事例があります。費用ごとに整理して、規程に明記しておくことが、運用の基本です。社宅制度の設計や費用負担の見直しでお困りの場合は、専門家への相談もご検討ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。税務の取扱いは改正される場合があります。国税庁の質疑応答事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引に適用する場合は、異なる課税関係が生ずることがあります。実際の判断にあたっては、最新の通達・公的資料を確認し、税務署や税理士などの専門家にご相談ください。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。