令和8年10月から社宅の現物給与価額が変わります|畳数から総床面積へ
要約:令和8年10月1日から、住宅にかかる現物給与の価額の算定方法が「居住室部分の畳1畳あたり」から「総床面積1平方メートルあたり」に変わります。玄関・台所・トイレ・浴室・廊下も面積に含めるため、現物給与価額は上がるケースが多くなります。東京都は畳1畳2,830円から総床面積1㎡1,330円へ。日本年金機構の例では居住室16畳・総床面積40㎡の物件で45,280円→53,200円に上がります。社宅使用料を据え置くと標準報酬月額が上がり、会社と従業員の社会保険料が増えるおそれがあるため、令和8年10月までに社宅使用料の再設定が必要です。根拠は厚生労働省告示による現物給与の価額の改正です。
1. 現物給与の価額とは
給与は金銭で支給されるのが一般的ですが、社宅や寮の貸与、食事、自社製品、通勤定期券などで支給するものを現物給与といいます。報酬や賞与の全部または一部が通貨以外で支払われる場合、その価額は厚生労働大臣が定めることとされています。
現物給与がある場合は、その現物を厚生労働大臣が定める価額で通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額を決定します。標準報酬月額は健康保険料・厚生年金保険料の計算基礎になるため、現物給与価額の増減はそのまま社会保険料に影響します。住宅の価額は都道府県別に定められています。
2. 令和8年10月1日から何が変わるのか
厚生労働省告示により、現物給与の価額が改正されました。適用開始日は現物の種類によって異なります。
- 食事にかかる現物給与の価額 … 令和8年4月1日から適用(適用済み)
- 住宅にかかる現物給与の価額および算定方法 … 令和8年10月1日から適用
算定方法の変更
1人1月あたりの住宅の利益の額 = 都道府県別の価額(畳1畳につき)× 居住室部分の畳数
対象:居間・茶の間・寝室・客間・書斎・応接間・仏間・食事室など居住用の室のみ。玄関・台所(炊事場)・トイレ・浴室・廊下・農家の土間などの居住用でない室、店・事務室・旅館の客室などの営業用の室は含めない。
令和8年10月1日から
1人1月あたりの住宅の利益の額 = 都道府県別の価額(総床面積1平方メートルにつき)× 総床面積(㎡)
対象:居住する住宅の床面積の合計(総面積)。玄関・台所・トイレ・浴室・廊下も含める。ただし別棟の物置・車庫の面積や、共同で使用している部分の面積は除く。
面積の基準が「居住室の畳数」から「総床面積」に広がるため、同じ物件でも算定対象となる面積が増えます。単価自体は引き下げられていますが、対象面積の拡大幅が大きい物件では現物給与価額が上がります。
なお、令和8年9月30日までの計算で面積が平方メートル表示されている場合は、1畳あたり1.65㎡に換算して畳数を求めます。
3. 47都道府県の価額一覧
住宅にかかる現物給与の価額は都道府県別に定められています。令和8年度の価額は次のとおりです。左列が令和8年9月30日までの畳1畳あたりの額、右列が令和8年10月1日からの総床面積1平方メートルあたりの額です。
| 都道府県 | 〜R8.9.30 畳1畳につき |
R8.10.1〜 総床面積1㎡につき |
|---|---|---|
| 北海道 | 1,110円 | 530円 |
| 青森 | 1,040円 | 460円 |
| 岩手 | 1,110円 | 520円 |
| 宮城 | 1,520円 | 680円 |
| 秋田 | 1,110円 | 490円 |
| 山形 | 1,250円 | 540円 |
| 福島 | 1,200円 | 540円 |
| 茨城 | 1,340円 | 600円 |
| 栃木 | 1,320円 | 590円 |
| 群馬 | 1,280円 | 550円 |
| 埼玉 | 1,810円 | 840円 |
| 千葉 | 1,760円 | 830円 |
| 東京 | 2,830円 | 1,330円 |
| 神奈川 | 2,150円 | 1,010円 |
| 新潟 | 1,360円 | 580円 |
| 富山 | 1,290円 | 560円 |
| 石川 | 1,340円 | 580円 |
| 福井 | 1,220円 | 540円 |
| 山梨 | 1,260円 | 560円 |
| 長野 | 1,250円 | 560円 |
| 岐阜 | 1,230円 | 540円 |
| 静岡 | 1,460円 | 650円 |
| 愛知 | 1,560円 | 710円 |
| 三重 | 1,260円 | 580円 |
| 滋賀 | 1,410円 | 640円 |
| 京都 | 1,810円 | 830円 |
| 大阪 | 1,780円 | 820円 |
| 兵庫 | 1,580円 | 730円 |
| 奈良 | 1,310円 | 580円 |
| 和歌山 | 1,170円 | 490円 |
| 鳥取 | 1,190円 | 500円 |
| 島根 | 1,150円 | 500円 |
| 岡山 | 1,360円 | 620円 |
| 広島 | 1,410円 | 670円 |
| 山口 | 1,140円 | 500円 |
| 徳島 | 1,160円 | 510円 |
| 香川 | 1,210円 | 550円 |
| 愛媛 | 1,130円 | 500円 |
| 高知 | 1,130円 | 490円 |
| 福岡 | 1,430円 | 670円 |
| 佐賀 | 1,170円 | 510円 |
| 長崎 | 1,150円 | 510円 |
| 熊本 | 1,150円 | 530円 |
| 大分 | 1,170円 | 530円 |
| 宮崎 | 1,080円 | 490円 |
| 鹿児島 | 1,110円 | 470円 |
| 沖縄 | 1,290円 | 620円 |
計算の結果に端数が生じた場合は1円未満を切り捨てます。また、健康保険組合では現物給与の価額について規約により別段の定めをしている場合があります。
4. 日本年金機構が示す計算例
東京都に所在する事業所で、居住室部分16畳(26.4㎡)・総床面積40㎡の社宅を貸与した場合の計算です。
2,830円(畳1畳につき)× 16畳 = 45,280円
※面積が㎡表示の場合:26.4㎡ ÷ 1.65㎡ × 2,830円 = 45,280円
令和8年10月1日から
1,330円(総床面積1㎡につき)× 40㎡ = 53,200円
45,280円 → 53,200円。従来は算定対象外だった玄関・台所・トイレ・浴室・廊下(26.4㎡と40㎡の差=13.6㎡)が加わるためです。社宅使用料を据え置いたままだと標準報酬月額が上がり、会社と従業員の社会保険料が増えるおそれがあります。
月の途中で入居した場合(日割計算)
月途中から入居した場合は日割計算を行います。
【例】東京都の事業所・総床面積40㎡の社宅に4月11日入居
53,200円 × 20日 ÷ 30日 = 35,466.666… → 35,466円
5. 社宅使用料を徴収している場合の取り扱い
住宅の家賃等を従業員から徴収している場合は、現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となります。したがって社宅使用料を現物給与の価額以上に設定すれば、標準報酬月額への算入は0円になります。
【例】東京都・総床面積40㎡の場合(令和8年10月1日以降)
価額:1,330円 × 40㎡ = 53,200円
社宅使用料 30,000円 を徴収 → 53,200円 − 30,000円 = 23,200円が標準報酬月額に算入
社宅使用料 55,000円 を徴収 → 53,200円 − 55,000円 < 0 → 算入額は0円
食事の場合は、徴収額が現物給与価額の3分の2以上であれば現物による食事の供与はないものとして取り扱います。しかし住宅の家賃等を徴収している場合は、この取り扱いではなく、現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となります。混同しやすい点です。
6. 実務上の注意点
勤務地の価額で計算します(社宅の所在地ではありません)
勤務地がA県、社宅がB県にある場合、勤務地であるA県の価額で計算します。被保険者の人事・労務および給与の管理がなされている事業所が所在する地域の価額により算定するためです。
本社と支店が1つの適用事業所の場合は、それぞれの勤務地の価額
本社で人事・労務・給与をまとめて管理し、本社と支店等が合わせて1つの適用事業所となっている場合でも、本社・支店等それぞれが所在する地域の価額で計算します。現物給与の価額は本来、生活実態に即した価額であることが望ましいためです。
たとえば東京本社が北海道支店を管理している場合、東京本社の社員は東京の価額(令和8年10月1日以降は1,330円/㎡)、北海道支店の社員は北海道の価額(530円/㎡)を使います。
なお派遣労働者の場合は、実際の勤務地である派遣先の事業所ではなく、派遣元の事業所が所在する都道府県の価額で計算します。
固定的賃金の変動に該当します
現物給与価額の改正は固定的賃金の変動に該当します。そのため被保険者報酬月額変更届が必要になる場合があります。令和8年10月の改正で現物給与価額が変わる従業員について、随時改定の要件を満たすかどうかの確認が必要です。
給与の締め日は考慮しません
現物給与(食事・住宅等)は、給与の締め日にかかわらずその月の1か月分として計算し、当月の金銭給与と合算します。たとえば15日締め・当月20日支払の場合でも、4月分は4月1日〜4月30日の1か月分として計算します。
7. 対応チェックリスト
令和8年10月1日までに、次の点をご確認ください。
- 社宅として貸与している全物件の総床面積を把握する(玄関・台所・トイレ・浴室・廊下を含む)
- 物件ごとに、改正後の現物給与価額(都道府県別の㎡単価 × 総床面積)を算出する
- 現行の社宅使用料と比較し、標準報酬月額への算入額が増える従業員を洗い出す
- 社宅使用料の再設定が必要な物件を特定し、改定額を決める
- 社宅規程に定めた使用料の算定方法を確認し、必要なら改定する
- 随時改定(月額変更届)の要件に該当する従業員を確認する
- 給与計算システムの現物給与の設定項目を「畳数」から「総床面積」に変更する
- 使用料が変わる従業員へ、改正内容と変更理由を事前に周知する
- 本社・支店が複数都道府県にある場合、勤務地ごとの単価を適用できているか確認する
8. 税務(給与課税)との違い
社宅には社会保険(現物給与の価額)と税務(賃貸料相当額)という2つの別の基準があり、混同されがちです。両者は計算方法も判定基準も異なります。
| 比較項目 | 社会保険 | 税務 |
|---|---|---|
| 用いる基準 | 現物給与の価額 (厚生労働大臣が定める額) |
賃貸料相当額 (固定資産税の課税標準額から計算) |
| 計算の基礎 | 都道府県別の単価 × 総床面積 | 建物の課税標準額×0.2%+12円×総床面積÷3.3+敷地の課税標準額×0.22% |
| 徴収額の判定 | 価額から徴収額を差し引く | 賃貸料相当額の50%以上を徴収すれば給与課税されない |
| 影響するもの | 標準報酬月額・社会保険料 | 所得税・住民税 |
社宅使用料を設計するときは、社会保険の現物給与価額と税務の賃貸料相当額の両方を満たす金額にする必要があります。片方だけを見て設定すると、給与課税が発生したり、標準報酬月額が想定より上がったりします。
- 日本年金機構「全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)」令和8年度版(都道府県別価額・計算例・Q&A)/令和8年度版PDFを直接開く
- 日本年金機構「令和8年4月1日から現物給与価額が改正されます」
- 厚生労働大臣が定める現物給与の価額の一部を改正する件(厚生労働省告示)
- 国税庁タックスアンサー「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
- 国税庁タックスアンサー「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
本ページに記載した価額は、すべて令和8年度(令和8年4月〜令和9年3月)の公表値です。 現物給与の価額は年度ごとに改定されるため、他年度の数値とは一致しません。実務では必ず該当年度の一覧表をご確認ください。また健康保険組合では、規約により別段の定めをしている場合があります。
本ページは令和8年7月31日時点の公表資料にもとづいています。制度の適用にあたっては、所轄の年金事務所または顧問の社会保険労務士・税理士にご確認ください。