法改正解説

令和8年10月から社宅の現物給与価額が変わります|畳数から総床面積へ

公開日:2026年7月31日  / 最終更新:2026年8月13日  / 執筆:株式会社ネクストプレナーズ(社宅制度コンサルティング実績300社超)

要約:令和8年10月1日から、住宅にかかる現物給与の価額の算定方法が「居住室部分の畳1畳あたり」から「総床面積1平方メートルあたり」に変わります。玄関・台所・トイレ・浴室・廊下も面積に含めるため、現物給与価額は上がるケースが多くなります。東京都は畳1畳2,830円から総床面積1㎡1,330円へ。日本年金機構の例では居住室16畳・総床面積40㎡の物件で45,280円→53,200円に上がります。社宅使用料を据え置くと標準報酬月額が上がり、会社と従業員の社会保険料が増えるおそれがあるため、令和8年10月までに社宅使用料の再設定が必要です。根拠は厚生労働省告示による現物給与の価額の改正です。

1. 現物給与の価額とは

給与は金銭で支給されるのが一般的ですが、社宅や寮の貸与、食事、自社製品、通勤定期券などで支給するものを現物給与といいます。報酬や賞与の全部または一部が通貨以外で支払われる場合、その価額は厚生労働大臣が定めることとされています。

現物給与がある場合は、その現物を厚生労働大臣が定める価額で通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額を決定します。標準報酬月額は健康保険料・厚生年金保険料の計算基礎になるため、現物給与価額の増減はそのまま社会保険料に影響します。住宅の価額は都道府県別に定められています。

2. 令和8年10月1日から何が変わるのか

厚生労働省告示により、現物給与の価額が改正されました。適用開始日は現物の種類によって異なります。

算定方法の変更

令和8年9月30日まで
1人1月あたりの住宅の利益の額 = 都道府県別の価額(畳1畳につき)× 居住室部分の畳数
対象:居間・茶の間・寝室・客間・書斎・応接間・仏間・食事室など居住用の室のみ。玄関・台所(炊事場)・トイレ・浴室・廊下・農家の土間などの居住用でない室、店・事務室・旅館の客室などの営業用の室は含めない。
令和8年10月1日から
1人1月あたりの住宅の利益の額 = 都道府県別の価額(総床面積1平方メートルにつき)× 総床面積(㎡)
対象:居住する住宅の床面積の合計(総面積)。玄関・台所・トイレ・浴室・廊下も含める。ただし別棟の物置・車庫の面積や、共同で使用している部分の面積は除く。

面積の基準が「居住室の畳数」から「総床面積」に広がるため、同じ物件でも算定対象となる面積が増えます。単価自体は引き下げられていますが、対象面積の拡大幅が大きい物件では現物給与価額が上がります。

なお、令和8年9月30日までの計算で面積が平方メートル表示されている場合は、1畳あたり1.65㎡に換算して畳数を求めます。

3. 47都道府県の価額一覧

住宅にかかる現物給与の価額は都道府県別に定められています。令和8年度の価額は次のとおりです。左列が令和8年9月30日までの畳1畳あたりの額、右列が令和8年10月1日からの総床面積1平方メートルあたりの額です。

令和8年度 1人1月当たりの住宅の利益の額(単位:円)/出典:日本年金機構「全国現物給与価額一覧表」
都道府県 〜R8.9.30
畳1畳につき
R8.10.1〜
総床面積1㎡につき
北海道1,110円530円
青森1,040円460円
岩手1,110円520円
宮城1,520円680円
秋田1,110円490円
山形1,250円540円
福島1,200円540円
茨城1,340円600円
栃木1,320円590円
群馬1,280円550円
埼玉1,810円840円
千葉1,760円830円
東京2,830円1,330円
神奈川2,150円1,010円
新潟1,360円580円
富山1,290円560円
石川1,340円580円
福井1,220円540円
山梨1,260円560円
長野1,250円560円
岐阜1,230円540円
静岡1,460円650円
愛知1,560円710円
三重1,260円580円
滋賀1,410円640円
京都1,810円830円
大阪1,780円820円
兵庫1,580円730円
奈良1,310円580円
和歌山1,170円490円
鳥取1,190円500円
島根1,150円500円
岡山1,360円620円
広島1,410円670円
山口1,140円500円
徳島1,160円510円
香川1,210円550円
愛媛1,130円500円
高知1,130円490円
福岡1,430円670円
佐賀1,170円510円
長崎1,150円510円
熊本1,150円530円
大分1,170円530円
宮崎1,080円490円
鹿児島1,110円470円
沖縄1,290円620円

計算の結果に端数が生じた場合は1円未満を切り捨てます。また、健康保険組合では現物給与の価額について規約により別段の定めをしている場合があります。

4. 日本年金機構が示す計算例

東京都に所在する事業所で、居住室部分16畳(26.4㎡)・総床面積40㎡の社宅を貸与した場合の計算です。

令和8年9月30日まで
2,830円(畳1畳につき)× 16畳 = 45,280円
※面積が㎡表示の場合:26.4㎡ ÷ 1.65㎡ × 2,830円 = 45,280円
令和8年10月1日から
1,330円(総床面積1㎡につき)× 40㎡ = 53,200円
この例では現物給与価額が 7,920円 上がります

45,280円 → 53,200円。従来は算定対象外だった玄関・台所・トイレ・浴室・廊下(26.4㎡と40㎡の差=13.6㎡)が加わるためです。社宅使用料を据え置いたままだと標準報酬月額が上がり、会社と従業員の社会保険料が増えるおそれがあります。

月の途中で入居した場合(日割計算)

月途中から入居した場合は日割計算を行います。

1か月相当の現物給与価額 × (入居日以降の日数 ÷ その月の総日数) ※1円未満切り捨て

【例】東京都の事業所・総床面積40㎡の社宅に4月11日入居
53,200円 × 20日 ÷ 30日 = 35,466.666… → 35,466円

5. 社宅使用料を徴収している場合の取り扱い

住宅の家賃等を従業員から徴収している場合は、現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となります。したがって社宅使用料を現物給与の価額以上に設定すれば、標準報酬月額への算入は0円になります。

現物給与価額 = 厚生労働大臣が定める価額 − 従業員から徴収する社宅使用料

【例】東京都・総床面積40㎡の場合(令和8年10月1日以降)
価額:1,330円 × 40㎡ = 53,200円
社宅使用料 30,000円 を徴収 → 53,200円 − 30,000円 = 23,200円が標準報酬月額に算入
社宅使用料 55,000円 を徴収 → 53,200円 − 55,000円 < 0 → 算入額は0円
食事の「3分の2ルール」は住宅には適用されません

食事の場合は、徴収額が現物給与価額の3分の2以上であれば現物による食事の供与はないものとして取り扱います。しかし住宅の家賃等を徴収している場合は、この取り扱いではなく、現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となります。混同しやすい点です。

6. 実務上の注意点

勤務地の価額で計算します(社宅の所在地ではありません)

勤務地がA県、社宅がB県にある場合、勤務地であるA県の価額で計算します。被保険者の人事・労務および給与の管理がなされている事業所が所在する地域の価額により算定するためです。

本社と支店が1つの適用事業所の場合は、それぞれの勤務地の価額

本社で人事・労務・給与をまとめて管理し、本社と支店等が合わせて1つの適用事業所となっている場合でも、本社・支店等それぞれが所在する地域の価額で計算します。現物給与の価額は本来、生活実態に即した価額であることが望ましいためです。

たとえば東京本社が北海道支店を管理している場合、東京本社の社員は東京の価額(令和8年10月1日以降は1,330円/㎡)、北海道支店の社員は北海道の価額(530円/㎡)を使います。

なお派遣労働者の場合は、実際の勤務地である派遣先の事業所ではなく、派遣元の事業所が所在する都道府県の価額で計算します。

固定的賃金の変動に該当します

現物給与価額の改正は固定的賃金の変動に該当します。そのため被保険者報酬月額変更届が必要になる場合があります。令和8年10月の改正で現物給与価額が変わる従業員について、随時改定の要件を満たすかどうかの確認が必要です。

給与の締め日は考慮しません

現物給与(食事・住宅等)は、給与の締め日にかかわらずその月の1か月分として計算し、当月の金銭給与と合算します。たとえば15日締め・当月20日支払の場合でも、4月分は4月1日〜4月30日の1か月分として計算します。

7. 対応チェックリスト

令和8年10月1日までに、次の点をご確認ください。

8. 税務(給与課税)との違い

社宅には社会保険(現物給与の価額)税務(賃貸料相当額)という2つの別の基準があり、混同されがちです。両者は計算方法も判定基準も異なります。

比較項目 社会保険 税務
用いる基準 現物給与の価額
(厚生労働大臣が定める額)
賃貸料相当額
(固定資産税の課税標準額から計算)
計算の基礎 都道府県別の単価 × 総床面積 建物の課税標準額×0.2%+12円×総床面積÷3.3+敷地の課税標準額×0.22%
徴収額の判定 価額から徴収額を差し引く 賃貸料相当額の50%以上を徴収すれば給与課税されない
影響するもの 標準報酬月額・社会保険料 所得税・住民税

社宅使用料を設計するときは、社会保険の現物給与価額と税務の賃貸料相当額の両方を満たす金額にする必要があります。片方だけを見て設定すると、給与課税が発生したり、標準報酬月額が想定より上がったりします。

出典

本ページに記載した価額は、すべて令和8年度(令和8年4月〜令和9年3月)の公表値です。 現物給与の価額は年度ごとに改定されるため、他年度の数値とは一致しません。実務では必ず該当年度の一覧表をご確認ください。また健康保険組合では、規約により別段の定めをしている場合があります。

本ページは令和8年7月31日時点の公表資料にもとづいています。制度の適用にあたっては、所轄の年金事務所または顧問の社会保険労務士・税理士にご確認ください。

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よくあるご質問

報酬や賞与の全部または一部が通貨以外のもので支払われる場合、その価額は厚生労働大臣が定めます。社宅や寮の貸与、食事、自社製品、通勤定期券などが対象です。現物で支給するものがある場合は、厚生労働大臣が定める価額で通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額を決定します。住宅の価額は都道府県別に定められています。
住宅にかかる現物給与の価額の算定方法が変わります。令和8年9月30日までは「居住室部分の畳1畳あたり」の価額で計算し、玄関・台所・トイレ・浴室・廊下などの居住用でない部分は面積に含めませんでした。令和8年10月1日からは「総床面積1平方メートルあたり」の価額で計算し、玄関・台所・トイレ・浴室・廊下も面積に含めます。ただし別棟の物置・車庫の面積や共同で使用している部分の面積は除きます。根拠は厚生労働省告示による現物給与の価額の改正です。なお食事の価額の改正は令和8年4月1日から適用されています。
物件によって異なりますが、上がるケースが多くなります。日本年金機構が示す例では、東京都に所在する事業所で居住室16畳・総床面積40平方メートルの物件の場合、令和8年9月30日までは2,830円×16畳=45,280円、令和8年10月1日からは1,330円×40平方メートル=53,200円となり、7,920円上がります。従来は面積に含めなかった玄関・台所・トイレ・浴室・廊下が算定対象に加わるためです。社宅使用料を据え置いたままだと標準報酬月額が上がり、会社と従業員の社会保険料が増えるおそれがあります。
住宅の家賃等を従業員から徴収している場合は、現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与価額となります。したがって社宅使用料を現物給与の価額以上に設定すれば、標準報酬月額への算入は0円になります。東京都で総床面積40平方メートルの物件なら、令和8年10月1日以降の現物給与価額は1,330円×40=53,200円ですので、社宅使用料を53,200円以上に設定すれば算入額は0円です。なお食事の場合は徴収額が価額の3分の2以上なら供与なしとして扱いますが、住宅にはこの3分の2ルールは適用されず、差引計算になります。
日割計算を行います。1か月相当の現物給与価額に、入居日以降の日数をその月の総日数で割った割合を掛けます。1円未満の端数は切り捨てます。日本年金機構の例では、東京都の事業所で総床面積40平方メートルの物件に4月11日入居の場合、1,330円×40平方メートル=53,200円に20日÷30日を掛けて35,466円となります。
本社と支店等が合わせて1つの適用事業所となっている場合でも、それぞれの勤務地が所在する地域の価額で計算します。現物給与の価額は生活実態に即した価額であることが望ましいためです。たとえば東京本社が北海道支店を管理している場合、東京本社の社員は東京の価額、北海道支店の社員は北海道の価額を使います。なお派遣労働者の場合は、実際の勤務地である派遣先ではなく、派遣元の事業所が所在する都道府県の価額で計算します。また社宅の所在地ではなく勤務地の価額を使う点にも注意が必要です。
はい、固定的賃金の変動に該当します。そのため被保険者報酬月額変更届が必要になる場合があります。固定的賃金の変動とは、昇給・降給や住宅手当・役付手当等の固定的な手当の追加や支給額の変更をいいます。令和8年10月の改正で現物給与価額が変わる場合、随時改定の要件を満たすかどうかの確認が必要です。

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