社宅の賃貸料相当額の計算方法|従業員の負担額は国税庁の3つの要素で決める
要約:従業員に社宅を貸すとき、自己負担額をいくらにすればよいかは、賃貸料相当額から決めます。賃貸料相当額は、建物の課税標準額、床面積、敷地の課税標準額の3つの要素を合計して計算します。この記事では、国税庁の基準に沿って、計算式、仮の数値での計算例、従業員から徴収する額の下限、課税標準額の調べ方を、人事・総務担当者向けに整理します。
社宅の賃貸料相当額とは何か。従業員の負担額を決める基準
賃貸料相当額とは、会社が従業員に社宅を貸すときに、課税の判断に使う家賃の基準額のことです。国税庁は、従業員から1か月当たり賃貸料相当額の50パーセント以上を受け取っていれば、給与として課税されないとしています。
賃貸料相当額は、物件の実際の家賃ではなく、固定資産税の課税標準額や床面積から計算する額です。そのため、従業員の負担額を自社で決めるときは、まず物件ごとに賃貸料相当額を計算し、そこから従業員に負担してもらう額を決める流れになります。
この記事では、従業員に貸与する社宅の賃貸料相当額の計算方法と、従業員から徴収する額の下限、計算に使う数字の調べ方を、国税庁の説明に沿って整理します。
社宅の賃貸料相当額の計算式は?3つの要素を合計する
賃貸料相当額は、次の(1)から(3)を合計して求めます。計算式は国税庁のタックスアンサーNo.2597に示されたものです。
賃貸料相当額(月額)=(1)+(2)+(3)
(1)その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2パーセント
(2)12円 ×(その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3平方メートル)
(3)その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22パーセント
| 要素 | 計算の考え方 | 必要な情報 |
|---|---|---|
| (1)建物分 | 建物の課税標準額に0.2パーセントを掛ける | その年度の建物の固定資産税の課税標準額 |
| (2)床面積分 | 総床面積を3.3平方メートルで割り、12円を掛ける | 建物の総床面積 |
| (3)敷地分 | 敷地の課税標準額に0.22パーセントを掛ける | その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 |
会社が借りている物件でも同じ計算になるのか
会社が借りている物件でも、同じ計算になります。国税庁は、会社が所有している社宅を貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも、(1)から(3)を合計した金額が賃貸料相当額になると説明しています。
借上社宅の場合、会社が家主に支払う家賃の額は計算式に出てきません。賃貸料相当額を計算するために、貸主や管理会社などから固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。
賃貸料相当額の計算例。仮の数値で3要素を計算する
ここでは、計算の流れを確認するために、仮の数値を使って賃貸料相当額を計算します。実在の物件の数値ではありません。
前提は、建物の課税標準額が300万円、総床面積が66平方メートル、敷地の課税標準額が400万円の物件です。
ステップごとの計算
- ステップ1:建物分を計算する。3,000,000円 × 0.2パーセント = 6,000円
- ステップ2:床面積分を計算する。66平方メートル ÷ 3.3平方メートル = 20、12円 × 20 = 240円
- ステップ3:敷地分を計算する。4,000,000円 × 0.22パーセント = 8,800円
- ステップ4:3つを合計する。6,000円 + 240円 + 8,800円 = 15,040円(これが賃貸料相当額)
- ステップ5:下限を求める。15,040円の50パーセント = 7,520円
この例では、従業員から月7,520円以上を受け取っていれば、賃貸料相当額との差額は給与として課税されません。
従業員から徴収する額の下限はいくらか。賃貸料相当額の50パーセント
従業員から徴収する額の下限は、賃貸料相当額の50パーセントです。これ以上を受け取っていれば、賃貸料相当額との差額は給与として課税されません。
国税庁の説明では、徴収額によって次のように扱いが変わります。上の計算例(賃貸料相当額15,040円)に当てはめた金額も併記します。
| 従業員からの受取額 | 国税庁の取扱い | 計算例の場合 |
|---|---|---|
| 無償(0円) | 賃貸料相当額が給与として課税される | 15,040円が課税される |
| 賃貸料相当額の50パーセント未満 | 受取額と賃貸料相当額との差額が給与として課税される | 例:5,000円を受け取る場合は、差額の10,040円が課税される |
| 賃貸料相当額の50パーセント以上 | 差額は給与として課税されない | 例:7,520円を受け取る場合は、差額の7,520円は課税されない |
注意したいのは、受取額が50パーセントに少しでも届かないと、50パーセントを超えた部分だけでなく、賃貸料相当額との差額の全体が給与として課税される点です。下限ちょうどに設定する場合は、物件の課税標準額の変更や計算の誤りで下回らないよう、余裕を持たせるかどうかも検討します。
無償で貸しても課税されない場合はあるのか
あります。国税庁は、看護師や守衛など、仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが困難な使用人に、仕事に従事させる都合上、社宅や寮を貸与する場合には、無償で貸与しても給与として課税されない場合があるとしています。この例外に当たるかどうかは、仕事の性質によって判断が分かれるため、迷う場合は所轄の税務署に確認してください。
固定資産税の課税標準額はどう調べるか
計算に使う固定資産税の課税標準額は、賦課期日(1月1日)における固定資産の価格として、固定資産課税台帳に登録されているものです。国税庁の質疑応答事例が、そのように説明しています。
自社所有の物件であれば、自社に届く固定資産税の関係書類で確認できます。他から借りている物件は、国税庁が「貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認することが必要」と説明しているとおり、貸主や管理会社に確認します。
新築で課税標準額が決まっていない場合はどうするか
社宅が新築等で、固定資産税の課税標準額が定められていない場合は、その社宅と状況の類似する住宅等の課税標準額に比準する価額を基に、賃貸料相当額を計算します。
課税標準額が変わったら、賃貸料相当額は計算し直すのか
原則として、計算し直します。ただし、従業員(使用人)に貸与した社宅については、課税標準額の改訂幅が20パーセント以内であれば再計算をする必要はないとされています(所得税基本通達36-46)。土地と家屋の評価は、原則として3年ごとに見直されます。
評価替えの年度に、台帳の価格がどう変わったかを確認し、20パーセントを超えて変わった物件だけ再計算する運用が、現実的だと考えられます。
賃貸料相当額の計算で間違えやすい4つのポイント
1. 現金の住宅手当や、本人名義で契約した家賃の負担は社宅にならない
現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅の貸与とは認められず、給与として課税されます。賃貸料相当額の計算を使えるのは、会社が契約者となって従業員に貸与する形です。詳しくは、借上社宅はなぜ法人契約でなければならないのかで整理しています。
2. 実際の家賃を基準にしてしまう
賃貸料相当額は固定資産税の課税標準額などから計算する額であり、実際の家賃とは別の数字です。実際の家賃の何割という考え方で従業員の負担額を決めると、国税庁の計算式で求めた額と食い違うことがあります。
3. 水道光熱費や駐車場代の扱いを混同する
賃貸料相当額と、水道光熱費・駐車場代・管理費の扱いは、別に整理する必要があります。費用ごとの線引きは、社宅の水道光熱費・駐車場代・管理費を会社が負担すると課税されるのかをご覧ください。
4. 役員に貸す場合も従業員と同じ式だと思い込む
役員に貸与する場合は、従業員とは別の取扱いがあります。国税庁のタックスアンサーNo.2600では、社宅の床面積により、小規模な住宅とそれ以外の住宅に分けて計算するとされています。
小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物では床面積が132平方メートル以下、30年を超える建物では99平方メートル以下の住宅をいいます。この小規模な住宅の計算式は、上で説明した3つの要素と同じです。一方、小規模でない住宅は計算方法が異なり、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められない、いわゆる豪華社宅は、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
なお、社会保険料の計算で使う住宅の現物給与の価額は、所得税の賃貸料相当額とは別の基準で定められています。社会保険への影響は、現物給与価額の改正が標準報酬月額・社会保険料に与える実務的な影響で解説しています。
社宅の従業員負担額を決める実務手順
自社の社宅について従業員の負担額を決めるときは、次の順で進めると整理しやすくなります。
- ステップ1:貸与する物件ごとに、建物・敷地の課税標準額と建物の総床面積を集める(借上物件は貸主や管理会社に確認する)
- ステップ2:3つの要素を計算し、賃貸料相当額を求める
- ステップ3:賃貸料相当額の50パーセントを下限として、従業員の負担額を決める
- ステップ4:負担額の決め方と、課税標準額が変わったときの再計算のルールを社宅規程に定める
- ステップ5:評価替えの年度などに、課税標準額が変わっていないかを確認する
規程への定め方や、就業規則の改定・届出の流れは、社宅規程の作り方。就業規則改定・労基署届出までの実務手順で説明しています。
ネクストプレナーズの見解
従業員の負担額は、賃貸料相当額の50パーセントを下限として、従業員の手取りと会社の負担のバランスで決める設計の問題だと考えます。50パーセントは給与課税されないための下限であり、ちょうどにすることが最適とは限らないと考えます。
物件ごとに計算して個別に徴収額を決めるのか、地域や床面積の帯ごとに一定の区分を設けるのかによって、毎年の運用負担も変わります。計算の手間を先に見積もったうえで、方針を決めることをおすすめします。
賃貸料相当額を計算するときのチェックリスト
- 会社が契約者となり、従業員に社宅として貸与する形になっている
- 建物と敷地それぞれの、その年度の固定資産税の課税標準額を確認した
- 借上物件は、貸主や管理会社から課税標準額を確認した
- 建物の総床面積を確認し、3.3平方メートルあたり12円で計算した
- 3つの要素を合計し、その50パーセントを従業員の負担額の下限とした
- 従業員の負担額が下限を下回っていない
- 課税標準額が変わったときの再計算のルールを社宅規程に定めた
まとめ
従業員に貸与する社宅の賃貸料相当額は、建物の課税標準額×0.2パーセント、12円×(総床面積÷3.3平方メートル)、敷地の課税標準額×0.22パーセントの3つを合計して求めます。従業員から賃貸料相当額の50パーセント以上を受け取っていれば、差額は給与として課税されません。
計算の元になる課税標準額は、貸主や管理会社に確認し、評価替えのたびに見直します。役員に貸与する場合や、個別の物件で判断に迷う場合は、税理士や所轄の税務署に確認してください。
監修
仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。
ご利用にあたっての注意
この記事は、国税庁が公表している情報(令和8年4月1日現在法令等)をもとにした一般的な解説であり、個別の事案についての税務上の判断を示すものではありません。計算例の数値は説明のための仮のものです。実際の社宅の取扱いについては、税理士や所轄の税務署にご確認ください。